三菱電機株式会社(執行役社長:野間口 有)は、エアコンや換気扇などの送風機に使う小出力ブラシレスDCモーター※1を高性能化する新技術として、世界で初めて、強磁性粉末複合樹脂(以下 樹脂鉄心材料)を射出成形してバックヨーク※2を形成し、プラスチックマグネットを一体成形する「樹脂鉄心ローター」製造技術を開発しました。この開発成果を応用することで、エアコンや換気扇などのさらなる省エネが可能となります。
※1: DC(直流)モーターにおいて、永久磁石(マグネット)を回転子(ローター)とし、ブラシや整流子などの機械的接触部を取り除いた高効率、高信頼性が特長のモーター
※2: 磁束の漏れを防ぎマグネットの磁力を最大限に引き出すため、マグネットに取り付ける磁性部品
主な開発成果
- 1.樹脂鉄心ローターの開発
- 2.モータ性能の向上
- 3.端材を自工程で再利用
従来のブラシレスDCモーターのローターはフェライトマグネットや希土類マグネットを用い、周方向にN極とS極が交互に並ぶ円筒形状をしています。しかしローター表面の磁束密度分布は周方向に滑らかでなく、N極とS極の間で磁束密度が急変する矩形状であることから、回転力(トルク)の脈動(リップル)を生じ、低騒音と効率の両立を妨げる原因になっていました。当社は射出成形可能な樹脂鉄心材料を用いて、厚みを連続的に変化させた外周のプラスチックマグネットの形状(偏肉形状)に合わせて、バックヨークを一体成形することにより、磁極の中心に磁束を集中させると同時に、磁束分布を滑らかにすることに成功しました。これにより、モーター性能の向上と同時に小型、軽量化を実現しました。
(1)高効率化: 磁極の中心に磁束を集中させることにより高めた磁力で、モーターの高効率化を可能にしました。これにより、エアコンのファンモーターにおいて、モーター効率※3を従来の84%から87%に向上できました。モーター損失※4で比較すると20%の改善です。
※3:モーター効率=[モーター出力(仕事率)]/[モーター入力(消費電力)]
※4:モーター損失=[モーター入力(消費電力)]-[モーター出力(仕事率)]
(2)モーターの低騒音化: 一般的にモーター効率を上げるためには強力な希土類マグネットを使いますが、同時にトルクリップルが増えるので、製品に組み込んだ場合、従来のローター構造では騒音が10dB以上大きくなることがあり、強力な磁石が使えず、モーター効率を最大限に引き出せませんでした。樹脂鉄心ローターでは、表面の磁束密度の分布が滑らかなため、強力な磁石により、モーター効率を上げても騒音を現行同等レベル以下に抑えることができました。
(3)モーターの高出力化: 樹脂鉄心材料を用いたバックヨークでは、ステーターの反磁界が小さくなり、電流を増してもマグネットの磁力を弱めてしまうことがないため、トルクを上げることができます。これにより、モーター出力を約30%向上することができ、小型で高出力のモーターを作ることができます。
プレス加工して製造する従来の電磁鋼板バックヨークでは、必ず端材(スクラップ)が発生しますが、樹脂鉄心材料の場合は、端材を射出成形工程で再利用ができるため、材料を無駄にすることがありません。省資源性に優れているのはもちろん、自己循環型の再利用という利点があります。
今後の展開
ルームエアコン、換気扇などの送風機用モーターに順次搭載を進めていきます。
特許件数
国内6件出願中。